『願榮光歸香港』のJyutPingと逐語訳

 香港の『国歌』となってしまった『願榮光歸香港』(願榮光、香港に栄光あれ)にJyutPingと逐語訳をつけてみた。「『国歌』? 香港は特区でしょ」って作者……。これ狙って作ってるでしょ。歌詞自体は標準の文章語(這とか標準広東語では用いない)な上に古語の「榮光」という言葉を用いており、かなりレベルが高い。

 もちろん、香港の歌らしく発音は標準広東語。歌詞には当然のように英語版に日本語版(標準の歌詞は改善の余地あり)もある。数字は声調番号でJyutPingなので6声調式。

『願榮光歸香港』 曲:thomas dgx yhl 詞:t、一眾連登仔

何以 這土地 淚再流
Ho4ji5 ze2to2dei6 leoi6zoi3lau4
(何故に ここで 涙をまた流すのか)
何以 令眾人 亦憤恨
Ho4ji5 ling6zung3jan4 jik6fan5han6
(何が 人々を また憤らせるのか)
昂首 拒默沉 吶喊聲 響透
Ngong4sau2 keoi5mak6cam4 naap6haam3seng1 hoeng2tau3
(顔を上げ 沈黙を拒め 叫び声よ 響きとおれ)
盼自由 歸於 這裡
Paan3zi6jau4 gwai1jyu1 ze2leoi5
(願う自由を 返せ ここに)

何以 這恐懼 抹不走
Ho4ji5 ze2hung2geoi6 mut3bat1zau2
(何故に この恐怖から 逃げないのか)
何以 為信念 從沒退後
Ho4ji5 wai6seon3nim6 cung4mut6teoi3hau6
(何の 信念のために 退かないのか)
何解 血在流 但邁進聲 響透
Ho4gaai2 hyut3zoi6lau4 daan6maai6zeon3seng1 hoeng2tau3
(解らないか 血が流れても 進む声が 響きとおる)
建自由 光輝 香港
Gin3zi6jau4 gwong1fai1 Hoeng1gong2
(自由を建て 輝く 香港)

在 晚星 墜落 徬徨 午夜
Zoi6 maan5sing1 zeoi6lok6 pong4wong4 ng5je6
(夜空の星が堕ち 彷徨う 深夜に)
迷霧裡 最遠處 吹來 號角聲
Mai4mou6leoi5 zoi3jyun5cyu3 ceoi1loi4 hou6gok3seng1
(迷いの霧の 最も深いところから 吹かれる 角笛の音)
捍自由
Hon5zi6jau4
(守れ自由を)
來齊集這裡
Loi4cai4zaap6ze2leoi5
(集まれここに)
來全力抗對
Loi4cyun4lik6kong3deoi3
(全力で抵抗せよ)
勇氣 智慧 也 永不滅
Jung5hei3 zi3wai6 jaa5 wing5bat1mit6
(勇気も 知恵も また 永遠に不滅だ)

黎明來到 要光復 這香港
Lai4ming4loi4dou3 jiu3gwong1fuk6 ze2Hoeng1gong2
(夜明けが来た 光よ戻れ この香港に)
同行兒女 為正義 時代革命
Tung4hung4ji4neoi2 wai6zing3ji6 Si4doigaak3ming6
(子や娘とともに 正義のため 時代を変える)
祈求 民主 與自由 萬世都 不朽
Kei4kau4 man4zyu2 jyu5zi6jau4 maan6sai3dou1 bat1nau2
(祈る 民主と 自由が いつまでも 朽ちないことを)
我願 榮光 歸香港
Ngo5jyun6 wing4gwong1 gwai1Hoeng1gong2
(我は願う 栄光が 香港にあらんことを)

 「何解」の訳出に非常に苦心しましたさ。広東語には「點解」という疑問詞があるので、そっちから考えると早い。単純に訳すと「何故」という一語になってしまうけれど、その前に「何以(こっちも「何故」だけど、「何を以て」つまり「何が」になる)」が続くので、原義の「相手に理解や解釋を求める」、つまり「何か解るか」になる。結果、「解らないか 血が流れても 進む声が 響きとおる」となった次第。

 広東語の楽曲は韻を踏むのが特徴だけど、この曲は弱い。A1の「淚再流」(lau4)とA2の「抹不走」(zau2)くらいだけど、4声(低降調)と2声(高昇調)、清濁は置いておくとしても要は上声と平声なので韻になってない。

「Ginzijau gwaijyu Hoenggong!」